売上高/利益を年次比較、利益の読み方-損益計算書の見方
損益計算書は何期分かを比較して見ることが重要です。これを年次比較又は時系列比較といいます。
損益計算書で注目すべき数値は、『売上高』と、売上高から費用などを差し引いた、『5つの利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税金等調整前当期利益・当期利益)』です。これらがどのような意味をもつ数字なのか、どう見るかを順を追って記したいと思います。
損益計算書とは?
損益計算書とは、P/Lとも呼ばれ、一定期間の経営成績を明らかにするものです。わかり易く言えば、その事業年度にどのように利益が出たのか、いくら儲かったのかを表にまとめたものです。
損益計算書で会社の良し悪しを判断する場合、その期だけを見て判断するのではなく、何期かを比較して売上や利益が増えているかを見ることが必要です。
損益計算書を見れば、会社が稼いだ金額はもちろんのこと、稼ぐためにかかった費用や本業で稼いだのか副業で稼いだのかという点まで把握できます。
損益計算書 |
売上高 売上原価 売上総利益 販売費及び一般管理費 営業利益 営業外収益 営業外費用 経常利益 特別利益 特別損失 税金等調整前当期純利益 法人税、住民税及び事業税 法人税等調整額 当期純利益 |
売上高を見る
売上高とは、本業を軸に、業務での収入全てを合計したものです。売上高の大きさは、その会社の事業規模を表します。営業収益と呼ばれることもあります。
去年と今年で売上高は増えたのか、減ったのかということを把握します。売上高が減っている場合は、その理由を検討します。なんとなく減っていたではなく、必ず理由はありますのでそれを探しましょう。
当期純利益をみる
当期純利益とは、税引き前当期利益から、税金を支払った残りの額です。その期の営業活動における最終的な儲け(損)を示すものです。
損益計算書は当期純利益を出すための内訳書のようなものですので、これはしっかり押さえておきましょう。売上高が増えていても当期純利益が減っている場合があります。これにももちろん理由がありますので、それを追究する必要があります。
売上総利益の読み方
売上総利益とは、売上高から、売上原価(仕入れなどの費用)を差し引いた利益のことをいいます。粗利益ともいわれます。
段階利益を比較しながら、増収増益の理由を探します。ここで比較分析の対象とするのは、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税金等調整前当期純利益」の4つの段階利益です。
売上総利益は、ひとつひとつの取引で稼ぎ出した粗利益の総合計です。そのため、売上総利益に異常があった場合には、個々の取引にそって、販売価格と仕入原価とのバランスがどのように変化したかということを考えてみる必要があります。
売上総利益は、売上高-売上原価として計算されるわけですから、販売数量についての問題はそれほど影響しません。したがって単価レベルの問題ということがいえます。
販売価格の変化は、ほとんどの場合が、市場のメカニズムによってもたらされます。
同業者の新規参入により生じる供給過剰や競争の激化、技術革新による新製品の登場、為替の変動などが主な原因です。
一方、売上原価は、ちょっと複雑です。
売上と同じようにマーケットの動向から仕入価格が影響を受けますが、そのほかに仕入物流コストや在庫ロス(在庫不良や万引きなど)といったコストが売上原価に集計されますので、総合的な分析が必要となります。
営業利益の読み方
営業利益とは、売上総利益から給料や家賃、通信費、交際費など会社を維持したり、売上を上げるために使ったりした経費(販売費・一般管理費)を差し引いた額です。いわゆる本業の利益がこれに当たります。
- ※販売費‥‥営業マンの給料や広告宣伝費などの営業活動に深い関係を持つ経費
- ※一般管理費‥‥役員や事務職員の人件費や家賃など、販売には直接関係がない経費
営業利益は、売上総利益-(販売費+一般管理費)として計算されますので、営業利益に異常があった場合には、販売費と一般管理費を検討することとなります。
重要なのが、販売費・一般管理費は売上原価と違って、売上が減れば自動的に減るという比例関係が必ずしも成立しないことです。
販売費・一般管理費を見る場合には、会社維持にかかる最低のコストはどれくらいかを読み取ることも必要となってきます。
販売費・一般管理費の内訳としてはさまざまなものが含まれます。以下の5つに分けて見ていくとわかりやすいでしょう。
- 【人件費】
- 役員報酬
- 給料手当
- 賞与
- 退職金
- 法定福利費
- 福利厚生費
- 【営業経費】
- 荷造発送費
- 広告宣伝費
- 交際接待費
- 会議費
- 旅費交通費
- 【事業経費】
- 通信費
- 事務用品費
- 水道光熱費
- 新聞図書費
- 地代家賃
- 【設備費】
- リース料
- 減価償却費
- 修繕費
- 【その他】
- 寄付金
- 諸会費
- 租税公課
- 雑費
経常利益の読み方
経常利益は、営業利益に対して、配当や利息など本業以外の収支(営業外収益・営業外費用)で加減した額です。本業以外の利益を含めた会社の日常的な利益がこれに当たります。
経常利益は、営業利益±営業外損益として計算されますので、経常利益に異常があった場合には、営業外収益と営業外費用の中身を検討することになります。
営業外損益の主なものとしては、利息などの金融損益です。特に、営業外費用である支払利息は重要で、売上高の数十%という巨額な利息を支払い続けている会社もあります。
金融コストは会社の財務体質と密接に関連し、資金バランスの良し悪しが非常に重大な影響をもたらします。したがって、営業外損益を吟味する場合には、貸借対照表をあわせみることがより効果的ということになります。
さらに重要なことは、経常利益までの段階は、翌年もその翌年も似たような損益構造が続くという事を示唆している点です。
したがって、経常利益の段階で不本意な成績となっている会社は、根本的に経営スタイルを改善することを迫られているといっても過言ではないのです。
税金等調整前当期純利益の読み方
税金等調整前当期純利益は、経常利益に対して、土地の売却益や退職金支払いなどの特別な理由による収支を加減した利益です。税引き前当期利益は特別利益・特別損失が大きい場合に大きく変動する利益です。
経常利益±特別損益として計算されます。このため、税金等調整前当期純利益に異常があった場合には、特別損益の内容をよく調べる必要があります。
特別損益は、営業活動と直接関係しない経常性のない(毎期発生する見込みのない)損益です。一般的には、臨時的な損益と前期以前の損益の修正が含まれています。
特別損益を読む場合には、ここで出ている数字が今期限りということを頭に入れておきましょう。
したがって、来期以降の損益予測を行う場合には、経常性のない損益をはずして考えるようにしなければなりません。
新会社法による変更点
2006年の新会社法施行により、損益計算書にも変更点があります。
- 損益計算書には「当期純利益」までを表示することになり、「前期繰越利益」より下に表現していた内容は、新会社法施行で新設された、独立した計算書、「株主資本等変動計算書」で、より詳しく示すようになります。
- 従来、利益処分項目として計上されていた「役員賞与」が、発生した会計期間の費用として処理する方法に変わりました。平成18年度税制改正要綱においても、あらかじめ確定している役員賞与および一定の業績連動型報酬の損金算入が認められるようになりました。損益計算書の「販売費および一般管理費」部分に表示されます。
- 従来の「経常損益の部」「特別損益の部」「営業損益の部」「営業外損益の部」の表示は、しないことになりました。