信用格付けはどのようにして決まるのか?
~ポイントになる指標
格付けとは?
各銀行は、融資先を独自に、10~15段階くらいに格付けランクを細分化しています。これが、銀行が企業に対して行っている『格付け』です。
(例) 「AA+」 「Aaa」 企業のランク付け。銀行は取引企業すべてに対して格付けして、そのランクによって融資条件や取引方針が決まります。
格付けが上位のほうが、融資の際の金利は低くなりますし、継続的な融資も可能になります。格付けが下がると、金利は上がり、最悪の場合は融資すらしてもらえません。
格付けは次の2つのポイントから決定されます
- 決算書
2~3期分が求められます。 - 決算書に出ていない情報
- 決算書に記載されている土地の時価などの情報
- 業界の動向
- 経営者の資質
- 後継者の有無、その資質
- 返済が滞っていないか など
最近では『決算書に出ていない情報』より、『決算書』が重視される傾向にあります。中小企業の融資に手間をかけられないという理由からです。プロパー融資は別ですが、ビジネスローンなどはコンピュータに決算書の内容を打ち込んで、自動的に審査される仕組みになっています。したがって、『決算書』作りが非常に重要になってきます。
財務格付けと債務者区分(自己査定)
「財務格付け」
融資条件を決める。 取扱商品の変化など
- 財務格付けが上がると?
担保なしでも融資してもらえたり、金利が低く済んだり、(企業が)希望の条件で調達しやすくなる。 - 財務格付けが下がると?
・「企業の倒産リスクが高くなった。」と判断される。
・優越的地位の濫用を禁止する法律への対応で、財務格付けの低い企業へ金融商品提供を制限されているため、デリバティブ商品の契約ができなくなる。
- 銀行内の評価指標にすぎないと言われがちですが、融資方針に大きく影響するので、「正常先」でありつづけることが重要です。「要注意先」になってしまったら、メインバンク以外は貸してくれないでしょう。「要注意先」以下では、期限の利益も与えてもらえないかもしれません。
格付けの手順
格付けは
します。
格付けポイントになる指標
- 借入金返済可能期間
=(借入金-運転資金)÷キャッシュフロー
返済の必要のある借入金が、理論上あと何年で返済可能か?という指標。10年が目安。 - 債務超過解消期間
=債務超過額÷当期利益
現状の収益がつづくと仮定すると、あと何年で債務超過が解消するか?という指標。
実態を反映した純資産を見る。3年以内で実態の債務超過が解消しなければ「要注意先」以下の評価になる。
(実態を反映した純資産=不良在庫、不良債権、遊休資産などは、調整して評価しなおした上での純資産)
「正常先」であるためには・・・
・借入金返済可能期間10年以内
・債務超過解消期間3年以内 であること!!
定量評価
企業の安全性、収益性、借入金償還力などから、指標を組み合わせて判定されます。財務分析では、財務諸表は簿価ではなく、不良在庫、不良債権、遊休資産など資産性のないものは調整し、評価し直しした価額で、定量評価を行います。以下に定量評価に利用する数値計算方法をあげておきます
- 《安全性》当座比率 (すぐ現金化できる資産の水準を判定)
(現預金、受取手形、売掛金、有価証券)÷流動負債 - 流動比率 ( 短期的支払い能力を判定)
流動資産÷流動負債 - 固定比率 適切な固定資産の投下と純資産の水準を判定
固定資産÷純資産(自己資本) - 固定長期適合率 適切な固定資産の投下と純資産の水準を判定
固定資産÷(純資産÷固定負債) - 株主資本(自己資本)比率 変事対応力の判定
純資産÷総資本(純資産+負債) - 債務超過解消期間 債務超過が適正な年数で解消可能かどうかを判定
債務超過額÷当期利益 - 借入依存度 有利子負債の適正な水準の判定
有利子負債(割引手形+短期借入金+長期借入金+社債)÷総資本 - 《収益性》総資産経常利益率 投下資本がどの程度の利益をあげたかを判定
経常利益÷総資本(期首・期末平均) - 売上高営業利益率 利益(損失)の発生要因の分析
営業利益÷売上高 - 売上高経常利益率 利益(損失)の発生要因の分析
経常利益÷売上高 - 総資本回転率 資本の年間の利用度合い
売上高(年)÷総資本(期首・期末平均) - インタレストカバレッジレシオ 利益能力の判定
(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息・割引料 - 《償還能力》 借入金返済可能期間 償還能力の判定
(借入金-運転資金)÷キャッシュフロー
定性評価
決算書では過去のことしかわからないため、現時点での実態をつかむため、企業の実査、興信所・同業者からの側面情報、事業計画の内容評価を使って行います。
この評価は、貸し手(銀行など)の主観的判断によるところが多く、担当者が受けた印象などでも左右されてしまいます。
- 格下げになる要因 ・・・
業績悪化、経営者間の内紛、従業員の大量退職、銀行の融資方針変化、計画の未達、グループ会社の業績悪化、違法行為・粉飾決算、改善見込がたたない、他銀行の支援停止 - 格上げになる要因 ・・・
事業計画の妥当性と改善が見込める。計画通りに進捗している。
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