信用格付けアップのためにすること
財務内容の改善
<格付けをアップさせるには>
格付けやビジネスローンなどは、自動審査システムが主流になっています。コンピュータに数字を打ち込んで融資可否の決定がなされるのです。
ここで重要視されるのが決算書です。
決算書とは、『貸借対照表』と『損益計算書』と『キャッシュフロー計算書』です。金融機関によってどの指標に重点をおくかは異なりますが、一般的に『貸借対照表』では、「資産の流動化」と「資金調達の安定化」を進めると評価が高くなり、『損益計算書』では「営業利益」が大きいほうが、「キャッシュフロー計算書」では「フリーキャッシュフロー」が多いほど、評価は高くなります。
●貸借対照表(B/S)の改善で、借入金減少・債務超過解消
貸借対照表の改善は、比較的短期間でできて即効性もあります。
- 資産を利用し資金調達し「借入金」の額を下げる
1.キャッシュを生んでいない資産の売却をすることで、売却分だけ借入金減少できる
2.資産の流動化で資金調達をすることで、決算上の「借入金」を減らす
※資産処分は総資産が減少することなので、自己資本の毀損がなければ自己資本比率が改善するのです。「借入金返済可能期間」が短縮し、自己資本比率が改善するため格付けの引き上げが可能になります。 - 資金を調達して純資産を増やす
純資産を増やすような資金調達をすることは、増資をするということです。最近だと、VCや投資ファンドが「優先株」「劣後ローン」を使って助けてくれることもあります。ただし、VCを利用するときは、出資後の経営介入に気をつけなければなりません。
●損益計算書(P/L)の改善で、利益を増やす
損益計算書の改善は、事業を成長軌道に乗せることが必要ですから、売上を増やし、原価低減や経費節減をし、利益を増加させます。
効果が出るまでに、時間がかかりますが、企業が必ずやらなければならないことです!
資産の流動化
不動産や機械設備などの固定資産を少なくし、現預金や正常な売掛金や受取手形などの現金に近いもの(流動資産)を多い状態にすることです。
資産を流動化することにより、いろいろな財務指標が改善されるだけでなく資金繰りも楽になりますし、財務指標の改善は格付けにも好影響を与えます。
◎資産流動化の具体的な対策
- 【リースの活用】
リース物件の所有者はリース会社なので、自社の固定資産が殖えるのを抑えることができます。 - 【不動産の流動化】
不動産を別会社や個人に売却して分離することにより、大幅に固定資産を減らすことができます。(売却先での資金調達がカギ) - 【保証金の流動化】
保証金担保の融資では保証金が貸借対照表に残るので流動化にはなりません。そこで、大家との間に入って保証金を代わりに差し入れてくれるシステムを利用することもよいでしょう。(賃料は割高になります) - 【保険積立金の流動化】
契約者貸付を受けてまで継続している養老保険などは無意味です。実質的な価値がないにも関わらず固定資産として増え続けるので、解約して資金化するほうがよい場合が多くなります。
◎流動資産をさらに流動化する具体的な対策
- 【売掛金の資金化】
売掛金をファクタリング会社などに買い取ってもらい資金化します。売掛金の一部を貸借対照表から消すことができますが、小口で取り扱ってくれるところが少ないのが現状です。
売掛債権を担保とした借り入れは、売掛金が貸借対照表に残るので資産の流動化とはいえませんが、資金調達の手法の一つです。 - 【受取手形の資金化】
手形割引が一般的ですが、裏書譲渡(回し手形)も実質的には資金調達と同じです。他にも、手形を完全に買い取ってくれる金融サービスもあり、手形を完全に貸借対照表から消すことが可能です。 - 【定期預金の解約】
定期預金を担保として、同額までしか借り入れ枠がないのであれば、定期預金を解約して借入金と相殺します。資金繰りには全く影響せず、少なくとも借り入れ利息分は得になります。これは貸借対照表自体が小さくなるので格付けアップの要因になります
資金調達の安定化
支払手形や買掛金や短期借入金のように、すぐに支払義務(返済義務)の発生する調達方法よりも、社債や資本金のように長期間返済義務のない安定した資金調達を多くすることです
営業利益
営業利益は売上から原価を引いた粗利益(売上総利益)から、人件費などの販売管理費を差し引いたものです。
つまり、本業で儲かっているかどうかを表す重要な利益です。
これが何期もマイナスだと、資本金や過去の利益によって企業活動がなされているとみなされ、融資はおりませんし、格付けも低くなってしまいます。
ワンポイント!
中小企業では、節税対策も大切になりますが、節税のために利益を少なく計上しすぎてしまうと、今度は信用格付けが低くなってしまい、融資が必要なときに融資がおりないということにもなってしまいます。節税か格付けかをよく考慮しながら決算を行いましょう。
フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローとは、会社が稼いだお金から、会社が活動するのに必要なお金を差し引いた、余剰資金のことをいいます。文字通り、自由に使えるお金がいくらあるかです。 フリーキャッシュフローが充分にあれば、借入金の返済や預金の増加ができますので、資金繰りに心配がないということになり、金融機関も安心して融資を行える企業となるのです
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