労働者派遣契約・必要契約事項について
1.契約締結にあたって
労働者派遣契約の当事者(派遣元・派遣先)は、労働者派遣契約の締結にあたって、派遣労働者の就業条件を定めるとともに、その就業条件の組合せごとに派遣労働者の人数を定めなくてはなりません。
2.就業条件
必要最低限、契約締結しなくてはならないこと・・・
- 派遣労働者が従事する業務の内容
ひとりの派遣労働者が、複数の業務に就く場合、それぞれの業務内容を記載すること - 派遣先事業所の名称及び所在地、その他、就業の場所
- 労働者派遣の役務の提供を受ける者のために、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
- 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
- 派遣就業の開始及び終了の時刻、休憩時間
- 複合業務を派遣受入期間の制限を受けない業務として取り扱う場合には、それぞれの業務の通常の場合の1日当たり又は1週間当たりの就業時間数又はその割合を記載すること
- 安全及び衛生に関する事項
(ⅰ)派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関する事項(例えば、危険有害業務に従事させる場合には、当該危険有害業務の内容、当該業務による危険又は健康障害を防止する措置の内容等)、
(ⅱ)健康診断の実施等健康管理に関する事項(例えば、有害業務従事者に対する特別な健康診断が必要な業務に就かせる場合には、当該健康診断の実施に関する事項等)、
(ⅲ)換気、採光、照明等作業環境管理に関する事項、
(ⅳ)安全衛生教育に関する事項(例えば、派遣元及び派遣先で実施する安全衛生教育の内容等)、
(ⅴ)免許の取得、技能講習の修了の有無等就業制限に関する事項(例えば、就業制限業務を行わせる場合には、当該業務を行うための免許や技能講習の種類等)、
(ⅵ)安全衛生管理体制に関する事項、
(ⅶ)その他派遣労働者の安全及び衛生を確保するために必要な事項を記載すること - 派遣労働者から苦情の申出を受けた場合の苦情処理に関する事項
- 労働者派遣契約の解除時に派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
- 労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合には、紹介予定派遣に関する事項
(ⅰ)紹介予定派遣である旨、
(ⅱ)紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に予定される雇用契約の期間の定めの有無(期間の定めのない雇用であるか有期雇用であるか)、
(ⅲ)紹介予定派遣を受けた派遣先が、職業紹介を受けることを希望しなかった場合又は職業紹介を受ける者を雇用しなかった場合には、それぞれのその理由を、書面の交付若しくはファクシミリ・電子メールの送信の方法により、派遣元事業主に対して明示する旨、
(ⅳ)紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に、年次有給休暇及び退職金の取扱いについて、労働者派遣の期間を勤務期間に含めて算入する場合はその旨を記載すること - 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
①(派遣労働者が従事する業務の内容)が製造業務の場合は、派遣元責任者と派遣先責任者が、それぞれ製造業務専門派遣元責任者又は製造業務専門派遣先責任者である旨を記載すること - 労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先)が、④の派遣就業をする日以外の日に、派遣就業をさせることができ、又は⑤の派遣就業の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めをした場合には、当該派遣就業をさせることができる日又は延長することができる時間数
- 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与に関する事項
- 派遣受入期間の制限を受けない業務について行う労働者派遣に関する事項
・政令で定める業務について労働者派遣を行う場合は、政令の号番号を必ず付すこと
・事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務について労働者派遣を行う場合は、その旨を記載すること
・その業務が1か月間に行われる日数が当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者(原則として正規の従業員)の1か月間の所定労働日数に比し相当程度少なく(半分以下)かつ月10日以下である業務(「日数限定業務」といいます。)について労働者派遣を行う場合は、
(ⅰ)その旨
(ⅱ)当該派遣先においてその業務が1か月間に行われる日数、
(ⅲ)当該派遣先の通常の労働者の1か月間の所定労働日数を記載すること ・産前産後休業、育児休業等の代替要員としての業務について労働者派遣を行う場合は、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること
・介護休業等の代替要員としての業務の労働者派遣を行う場合は、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること
○ 契約の当事者は、契約の締結に際し、上記の事項及び派遣労働者の人数を書面に記載しておかなければなりません。
3.派遣契約期間の制限
派遣受入期間の制限のある業務の場合
その制限を超えて労働者派遣を行うことはできません。
受入期間制限のない業務の場合
派遣元事業主は、労働者派遣契約の締結時に、【労働者派遣の期間】を定めますが、厚生労働大臣が期間を定めた業務に関しては当該期間を超える定めをしてはなりません。
- 厚生労働大臣の定める期間は次のとおりです。
派遣受入期間の制限を受けない業務として政令で定める業務(「派遣先の講ずべき措置は・・・」の「政令で定める業務」のうち、
・1号から13号までの業務及び16号の業務のうち建築物又は博覧会場における来訪者の受付又は案内の業務、17号から23号まで、25号及び26号の業務については3年
・上記以外の業務については制限なし
契約の自動更新について
労働者派遣契約の再契約、更新自体は許容されていますが、双方異議を申し立てなければ派遣契約終了後自動的にその労働者派遣の期間が更新されるというような自動更新条項は認められません。
ただし、有期的事業(例えば、完成期日が契約により定められている情報処理システムの開発や各種プラント工事等をいいます。)の遂行のために、臨時的に設けられた組織において就業させる労働者派遣については、その更新された労働者派遣の期間を通算した期間が3年を超えないものについては、その更新が自動的に行われる旨を労働者派遣契約に定めることができます。
派遣契約期間の制限の趣旨
派遣先に常用雇用される労働者の派遣労働者による代替を防止するため、3年を超えて引き続き同一の業務に継続して派遣労働者を従事させるような場合には、本来直接雇用にすることが望ましいというものです。 派遣受入期間の制限を受けない業務について、
①同一の業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、
②その業務に労働者を雇い入れようとするとき
は、派遣先は、その派遣労働者に対して雇用契約の申込みをする法律上の義務があります。
4.派遣受入期間の制限
派遣受入期間の制限に抵触する日の通知
- 派遣先は、派遣契約の締結に当たり、あらかじめ、派遣元事業主に対し、労働者派遣の受入れ開始の日以後、派遣受入期間の制限に抵触する最初の日(派遣終了日)を通知しなければなりません。
- 通知は書面の交付、FAX、メールの送信により行う必要があります (新規締結時のみ必要。更新時は不要)
- しかし、労働者派遣契約の締結後に、派遣先で派遣受入期間の制限に抵触する日が変更された場合は、その都度、派遣元事業主に対して通知する必要があります。
- 派遣元事業主は、派遣労働者に対して派遣先の派遣受入期間の制限に抵触する日を書面、FAX、電子メールにより明示しなければなりません
5.派遣契約解除の制限
派遣先は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたことなどを理由として、労働者派遣契約を解除してはいけません。これに違反して行われた契約の解除は無効とされます。
また、派遣元事業主は、派遣先が労働者派遣法又は同法第3章第4節(44条)の規定によって適用される労働基準法等に違反した場合には、その労働者派遣を停止又は契約解除することができます。この契約の解除により派遣先が損害を被っても、債務不履行による損害賠償の責は負いません。
労働者派遣法第3章第4節の規定によって適用される労働基準法
3条均等待遇、5条強制労働禁止、69条徒弟の弊害排除、派遣先において7条公民権行使の保証、32~41条労働時間、休憩、休日、時間外労働、60~63条年少者の労働時間、休日、帰郷旅費など、64~68条女性の構内労働禁止や産前産後の規定など、、です。
6.派遣契約解除の具体的な措置
なるべく、派遣労働者の雇用安定を図らなければなりませんから、派遣元と派遣先は、協議して必要な措置を具体的に定めることが必要です。
「必要な措置」とは、
①労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
②派遣先における就業機会の確保
③損害賠償等に係る適切な措置
④労働者派遣契約の解除の理由の明示
についてです。 労働者派遣契約の契約期間が満了する前に、派遣労働者を交替させる場合も、その派遣労働者について①、②及び④に準じた取扱いをします。
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