特別償却準備金(減価償却)の取り崩し・損益算入
特別償却準備金の損金算入
法人税では、普通償却とは別の形で特別償却と同様の効果を得られる『特別償却準備金』を損金の額に算入することを認めています。
特別償却を行った場合には、翌期以降の償却費が減少することによって法人税の取戻しが行われますが、特別償却準備金を積み立てた場合には、減価償却を通じて法人税の取戻しを行うことができないため、特別償却準備金を取崩すことにより法人税の取戻しを行うこととしています。
特別償却準備金の取崩し
損金算入された特別償却準備金は、積立事業年度の翌事業年度から原則として7年間で均分に取り崩して益金算入されることにより法人税の取戻しが行われます。
<益金算入>
①要取崩額
特別償却準備金を設けている内国法人は、積立事業年度の翌事業年度から、次の算式により計算した金額を取り崩して、益金の額に算入します。
要取崩額=特別償却準備金の損金算入額×当期の月数÷84(※)
※について
[損金算入額]
会社計上の積立額と積立限度額のいずれか少ない額
[要取崩額の限度]
特別償却準備金の残額が限度となる
[計算区分]
積立事業年度及び特別償却対象資産別に区分して計算する
[固定資産の滅失があった場合]
特別償却対象資産の滅失、除却又は売却をした場合には、その資産に係る特別償却準備金の金額を取り崩して益金算入する
[取崩期間]
特別償却対象資産の耐用年数が10年未満である場合、算式の84は、「60」「耐用年数×12」のいずれか少ない数に置き換える
②別表4の調整
要取崩額-会社取崩額=(+)特別償却準備金取崩不足額(加算)
(-)取崩超過額‥‥積立超過額なし→処理なし
‥‥積立超過額あり→※取崩超過額と積立超過額のいずれか少ない方を特別償却準備金積立超過額認容(減算)
<経理方法による取扱いの差異>
余金の処分による経理をした場合の取崩額は、収益計上されておらず、当期純利益の計算段階で加算されていないことから、一旦、その取崩額を別表4で加算します。
特別償却準備金の積立て
特別償却準備金は、各特別償却に共通の制度で、適用資産の帳簿価額に影響を与えずに直接償却した場合と同様の効果を得るために認められています。
<適用要件>
- 適用法人‥‥特別償却の適用を受けることができる法人
- 適用要件‥‥特別償却の適用に代えて各特別償却対象資産別に積み立てること
<経理要件>
特別償却準備金の積立ては、次のいずれかの経理方法によらなければなりません。
- 損金経理の方法
- 決算の確定の日(株主総会の日)までに剰余金の処分により、積立金として積み立てる方法
剰余金の処分による積立額は、費用計上されておらず、当期純利益の計算段階で控除されていないことから、損金経理の場合と同様の効果を所得計算に与えるため、一旦、その積立額を別表4で減算します。
<損金不算入額>
会社計上積立額-積立限度額=(+)特別償却準備金積立超過額(加算)
(-)1年間の繰越可
<計算上の留意点>
(1)特別償却準備金は帳簿価額に影響しない。
特別償却準備金は帳簿価額に影響を与えません。
したがって、償却限度額の計算上、特別償却準備金の積立額及び積立限度額は一切関係させません。
(2)グルーピングが可能。
特別償却準備金は、減価償却(普通償却)とは切り離して計算します。
したがって、普通償却については、グルーピングが可能な場合は、グルーピングを行います。