特別償却(減価償却)
- 特別償却制度とは?
- 特別償却制度の種類と計算方法
- エネルギー需給構造改革推進設備等の特別償却
- 特定機械装置等の特別償却
- 情報基盤強化等の特別償却
- 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却
- 優良賃貸住宅等の割増償却
1.特別償却とは?
法人税法に規定する減価償却(普通償却)は、会社法などにおける『相当の償却』に相当するものです。 しかし、法人税における減価償却にはこの普通償却だけでなく、租税特別措置法に規定する減価償却(特別償却)があります。
この租税特別措置法に規定する特別償却は、いろいろな産業政策や住宅政策など、投資の促進等を目的とする政策上の要請から、一定の場合に特例的に、通常よりも償却限度額を大きくすることができるというものです。
早期償却を認めることにより、普通償却のみの場合より損金の額に算入する時期を早め、法人税の支払を繰延べる効果があります。課税の繰り延べ措置であって、非課税になるものではありません
2.特別償却制度の種類と計算方法
特別償却制度には、適用項目によって次の2つのケースがあります。
- 初年度特別償却
普通償却額に加えて、取得価額の一部を償却初年度に償却してしまう方法です。
普通償却限度額+特別償却限度額=償却限度額
(※特別償却限度額=取得価額×一定率) - 割増償却
普通償却額を一定期間割増しして償却する方法です。
普通償却限度額+特別償却限度額=償却限度額
(※特別償却限度額=普通償却限度額×一定率)
<注意点>
(1)グルーピング適用不可
特別償却の適用を受ける資産については、構造又は用途(設備の種類)、細目が同一である他の資産があったとしても、一切、グルーピングすることはできず、その資産のみで償却超過額を計算しなければなりません。
(2)他の特別償却等と重複適用不可
同一事業年度において、同一資産につき、適用することができる租税特別措置法上の優遇規定は原則として1つだけであるため、他の特別償却や特別控除等と重複して適用されることは認められません。ただし、試験研究費の特別控除は特定の資産を取得等した場合に適用されるものではないため、重複適用にはなりません。
3.エネルギー需給構造改革推進設備等の特別償却
エネルギー需給構造改革推進設備等については、特別控除か特別償却を選択することができます。
<適用要件>
- 適用法人‥‥青色申告法人
- 対象資産‥‥新品のエネルギー需給構造改革推進設備等
- 適用要件‥‥取得等した日から1年以内に事業の用に供すること(貸付の用を除く)
- 選択適用‥‥特別控除の適用を受けないこと
<償却限度額>
普通償却限度額+特別償却限度額=償却限度額
※特別償却限度額=基準取得価額×30%
<基準取得価額>
- 電気・ガス需要平準化設備、電気供給・利用安定化設備については、
取得価額×50% - エネルギー有効利用製造設備等、エネルギー有効利用付加設備等、新エネルギー利用設備等、その他の石油代替エネルギー利用設備などについては、
取得価額100%
<特別控除と特別償却の選択適用>
エネルギー需給構造改革推進設備等の特別控除は、中小企業等に限定して適用されますが、特別償却は中小企業に限らず、全ての青色申告法人について適用が認められます。
(1)中小企業者等‥‥特別控除又は特別償却の選択適用が可能
(1)以外の青色申告法人‥‥特別償却のみ適用が可能
4.特定機械装置等の特別償却
特定機械装置等を直接取得した場合には、特別控除か特別償却を選択することができます。リースした場合は、特別控除しか適用がありません。
<適用要件>
- 適用法人‥‥青色申告書を提出する中小企業者等
- 対象資産‥‥新品の特定機械装置等
- 適用要件‥‥指定事業の用に供すること(貸付の用を除く)
- 選択適用‥‥特別控除の適用を受けないこと
<特定機械装置等>
次に掲げる資産のうち、一定の要件を満たすものをいいます。
- 機械装置
- 事務処理の能率化等に資する一定の器具備品
- 一定のソフトウエア
- 大型貨物自動車
- 内航船舶
<償却限度額>
普通償却限度額+特別償却限度額=償却限度額
(※特別償却限度額=基準取得価額×30%)
<特別控除と特別償却の選択適用>
特定機械装置等の特別控除は、中小企業者等のうち、資本金額が3,000万円以下の特定中小企業者等に限定して適用されますが、特別償却は資本金額が1億円以下の中小企業者等であれば適用されます。
(1)特定中小企業者等‥‥特別控除又は特別償却の選択適用が可能
(1)以外の中小企業者等‥‥特別償却のみ適用が可能
5.情報基盤強化等の特別償却
情報基盤強化設備等を直接取得した場合には、特別控除か特別償却を選択することができます。リースした場合は、特別控除しか適用がありません。
<適用要件>
- 適用法人‥‥青色申告法人
- 対象資産‥‥新品の情報基盤強化設備等
- 適用要件‥‥事業の用に供すること(貸付の用を除く)
- 選択適用‥‥特別控除の適用を受けないこと
<情報基盤強化設備等>
次に掲げる資産(それぞれ一定のものに限る)をいいます。
① 基本システム
サーバー用のオペレーティングシステム
サーバー用の電子計算機
② データベース管理ソフトウエア又はそのデータベース管理ソフトウエア及びデータベースを構成する情報を加工する機能を有するソフトウエア
③ ①又は②と同時に設置するファイアウォールソフトウエア
<償却限度額>
普通償却限度額+特別償却限度額=償却限度額
(※特別償却限度額=基準取得価額(=取得価額×70%)×50%)
6.障害者を雇用する場合の機械等の割増償却
青色申告法人の障害者雇用割合が一定値以上である場合、一定の資産について割増償却が認められている。
<適用要件>
- 適用法人‥‥青色申告法人
- 適用要件‥‥障害者雇用割合が50%以上(雇用障害者数が20人以上のときは障害者雇用割合が25%以上)
- 対象資産‥‥機械装置、工場用建物及びその附属設備等(②の要件を満たす事業年度又はその事業年度前5年以内に取得したものに限る)
<対象資産>
- 機械装置
- 構築物(造船台及びドック)
- 工場用建物及びその附属設備
- 一定の車両運搬具
<償却限度額>
普通償却限度額+特別償却限度額=償却限度額
※工場用建物及びその附属設備の場合
特別償却限度額=普通償却限度額×32%
※それ以外の場合
特別償却限度額=普通償却限度額×24%
7.優良賃貸住宅等の割増償却
法人が新築された中心市街地優良賃貸住宅又は高齢者向け優良賃貸住宅を賃貸の用に供した場合には、賃貸の用に供した日以後5年間の割増償却が認められています。
<適用要件>
- 適用法人‥‥青色申告、白色申告を問わず、すべての法人
- 対象資産‥‥新築の中心市街地優良賃貸住宅又は高齢者向け優良賃貸住宅
- 適用要件‥‥賃貸の用に供すること
- 適用期間‥‥賃貸の用に供した日以後5年間の各事業年度
<償却限度額>
普通償却限度額+特別償却限度額=償却限度額
※特別償却限度額=普通償却限度額×36%‥‥耐用年数35年未満
×50%‥‥耐用年数35年以上