税務調査の目的、調査内容、準備と対応
1.税務調査の目的・調査内容
税務調査には大きく分けて強制調査と任意調査とがあります。
強制調査とは、悪質な脱税を行った場合に行われるもので、いわゆる『マルサ』と呼ばれるものです。一般的に税務調査というと任意調査のことを指します。
任意といっても、税務調査自体については受任義務という義務により、税務署に極力協力しなければなりません。
税務調査の目的
税務調査は本来、不正を見つけるという目的ではなく、現況を把握し、きちんと申告しているのかを確認したり指導したりするためのものです。日本では申告納税制度ですから、正しい申告を行っているかの確認だと思ってください。
税務調査というだけで過剰に反応することはありません。
税務調査内容
調査の中で大きな割合を占めているのが書類(帳簿)チェックです。
その中でも
- 交際費の処理
- 源泉所得税
- 消費税
は、細かくチェックされます。正確な会計帳簿の作成を心掛けましょう。
また、不正をしていなくても、現金出納帳など毎日の記載を怠り実額とずれが生じている会社はずさんな経理の印象を与えやすく、厳しい指摘を受けることがありますので注意しましょう。
注意点とポイント
税務調査の目的は、会社が申告した内容が正しいかどうかを税務署が確認するためのものですので、必要以上に不安に思うことはありません。
心構えとして大事なのは、
- うそはつかない
- 曖昧なことはその場で即答しないで、きちんと調べた上で正確な回答を行う
- 冷静な態度で接する
- 必要以外の余計な会話をしない
ということです。税務調査を早く終わらせるために、調査官が帳簿や関係書類を持ち帰る要望を出すことがあります。これについては、会社は拒否することができます。余計なところまで見られて指摘される可能性もありますが、早く終わる可能性もあります。どちらを選択するのかは、税理士と相談したり、会社の判断で決定してください。
2.税務調査の時期
基本的に、会社を立ち上げて3年が過ぎた頃に一度、そこで不正や怪しい処理が見つかった場合はそれから3年ごとに入るというケースが多いのですが、10年間全く調査に入られていない会社というのも珍しくありません。
前回不正が見つかった会社や税務署で重点業種に指定されている業種に属する会社、売上規模が大きめの黒字の会社は税務調査の対象となりやすいといえます。急激に業績が向上した会社や多額の貸倒がある会社、土地建物の取引があった会社なども税務調査対象になりやすいです。
調査の時期は特に決まっていませんが、3月決算の会社が多いことから9月に行われることが多いようです
3.税務調査の流れ
税務署からの連絡
基本的に税務署から電話連絡があります。そこで調査の日時を告げられますが、仕事の都合などで都合がつかない場合はその日の調査を断ることも可能です。しかし、その場合には別の日で都合をつけなければなりません。
準備調査
調査官は、税務調査に来る前に準備調査をします。会社の決算書を見て、前年対比などから異常値を把握し、実地調査で重点的に調べるところを確認します。
実地調査
大体朝から行われます。午前中は聞き取り調査を中心に行い、社長の経歴や企業の沿革などについて質問してきます。
その後、実際に総勘定元帳や領収書、請求書などを見ていきます。現金を取り扱う会社の場合は、現金出納帳と現金残高の確認を行うことが多いようです。
通常の調査は3日~1週間で終了します。
調査終了後
調査の結果によって、申告是認(申告が正しかったと認めること)、修正申告、更正の手続きをして、税金の修正分を納付もしくは還付の手続きをします。
修正申告の場合は、ペナルティーとして過少申告加算税、重加算税、延滞税等が加算されます。
4.修正申告
修正申告とは、申告した税額を誤って過少に申告していた場合に、納税者側から追加の税額を支払う申告のことをいいます。
他に、納付すべき税額があったにもかかわらず、納付すべき金額を記載しなかった場合や、申告書に記載した還付金が過大であったことがわかった場合にも修正申告書を提出します。
修正申告書を提出した場合には、正しい税額と、それまでに納付した税額との差額を納めることに加えて延滞税などの付帯税を納める必要があります。
誤りに気がついたらできるだけ早く修正申告してください。
税務署の調査を受けた後で修正申告をしたり、税務署から申告税額の更正を受けたりすると、新たに納める税金のほかに過少申告加算税がかかりますが、税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません
注意点!
原則として、一旦修正申告書を提出したら不服申立てはできなくなります。修正申告を行うということは、申告の間違いを認めたことになり、ペナルティーや延滞税等を支払うことになります。
税務調査での過少申告の解釈に納得がいかない場合は、修正申告を出さず、税務署長などが行った更正に対して不服申立てを行うことができます。納得がいくまで税務訴訟を行うことも可能になりますので、言われるままに修正申告を出すのではなく、誤りがあったことに納得した場合に修正申告書を提出しましょう
5.更正
更正とは、申告を会社で行っていない場合や申告して間違いがあった後に修正申告がない場合に、税務当局が税額の決定を行うことです。
また、納める税金が多過ぎた場合や還付される税金が少な過ぎた場合には、更正の請求という手続ができる場合があります。この手続は、誤りの内容を記載した更正の請求書を税務署長に提出することにより行います。
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から1年以内です。
更正の請求書が提出されると、税務署ではその内容の検討をして、納め過ぎの税金がある等と認めた場合には、減額更正(更正の請求をした人にその内容が通知されます)をして税金を還付することになります。
6.税務調査における税理士選び
本来、税務調査では税理士の力量に大きく左右されることはあまりありません。会社の帳簿・書類がきちんとした形であれば、税務調査がきても問題はないのです。
しかし、税務調査で問題が出てきた場合の税理士の対処法が調査結果を左右することはあります。
税務調査における税理士選びのポイント
- 会社の側に立ってくれる
- 会社の弱い部分を理解して、そこをフォローしてくれる
- 税務調査の状況をきちんと説明してくれる
- 税務署に対してきちんと発言できる
- 税法の枠の中だけではなく、総合的な判断ができる
料金面の問題もありますが、多少料金は高くてもそれに見合うようなサービスを受けることができるのであれば、その部分は妥協してもいいかもしれません。
会社と税理士が隠し事のない関係を保ち、常に会社の立場で考えてくれるような信頼できるパートナーとして付き合える税理士を選びましょう。
7.税務調査前に準備しておくこと
税理士に連絡する
税務署から連絡があったら、まずは顧問税理士に連絡を取って、社長と税理士と税務署の日程を調整します。
そして、必ず税理士と打ち合わせを行っておいてください
関係書類の準備
揃える書類は、業種や業態によって若干の違いはあるものの、現金出納帳や総勘定元帳は必ず準備しておいてください。
また、売上に関係する書類である納品書、請求書、領収書や仕入に関する書類もチェックされます。
さらに、不正を行う可能性があると税務署が疑う人件費などに関する書類も完璧に揃えておいたほうがよいでしょう。
調査はだいたい過去3期分までの書類を見ますので、これらの書類が揃っているか、整理されているかを確認し準備してください。
ここで注意することは、書類に付箋などが入っていないかということです。付箋が入っていると調査官はそれをチェックします。
書類・帳簿関係
- 現金出納帳
- 当座預金帳
- 普通預金帳
- 総勘定元帳
- 伝票売掛、買掛帳
- 請求書
- 納品書
- 領収書
- 見積書
人件費関係
- 給与台帳
- タイムカード
- 出勤簿
- 扶養控除申告書
- 社会保険関係書類
その他
- 契約書
- 議事録
- 賃貸借契約書
- 社内規定
- 棚卸、在庫表 など