対象になる受取配当等
-営業外損益(特別損益)の取り扱い
1.益金不算入の対象になる受取配当等
益金不算入の対象となる配当等の額は、すべての配当等の額ではなく、出資者である株主としての地位に基づいて、内国法人から受ける配当等の額に限られています。
- 余剰金の配当(株式または出資に係るものに限り、資本剰余金の額の減少に伴うものを除く)もしくは利益の配当の額
- 剰余金の分配(出資に係るものに限る)の額
- 証券投資信託の収益分配金のうち一定の金額
※公社債、預金の利子は、株主としての地位に基づいて受ける配当ではないので、益金不算入の対象となりません。
剰余金(利益)の配当、剰余金の分配
<益金不算入の対象となるもの>- 株式会社の剰余金の配当
- 持株会社の利益の配当
- 協同組合等の出資分量分配金
- 外国法人から受ける配当
(益金不算入の制度が内国法人と株主との国内における二重課税を排除するために設けられているため) - 公益法人等や人格のない社団等から受ける配当
(配当原資である利益が収益事業(法人税課税あり)から生じたか、非収益事業(法人税課税なし)から生じたかが不明なため) - 協同組合等の事業分量分配金
(売上割戻しと同様の性格を持ち支払法人側で損金算入されるものであり、出資者である株主としての地位に基づいて受け取るものではないため) - 基金利息(利息の配当)
(基金とは相互保険会社の開業基金であり、基金利息は建設利息と同様に支払法人側で損金算入されているため) - 保険会社等の契約者配当金
(保険の契約者に分配されるもので、支払法人側で損金算入されているため) - 名義書換失念株の配当金
(株主としての地位に基づいた配当金ではないため)
証券投資信託の収益分配金
証券投資信託は、株式、公社債等について投資運用されるもので、収益分配金は利子、配当、売買益等から構成されるため、簡便的に収益分配金の2分の1相当額を配当と擬制し、収益分配金の2分の1が益金不算入の対象となります。
公社債投資信託の収益分配金
公社債投資信託は、国債・地方債といった公債や社債を投資対象とし、収益分配金は利子、償還益から構成されており、配当として受けるものではないので益金不算入の対象となりません。
外貨建等証券投資信託及び特定外貨建等証券投資信託の収益分配金
- 特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建証券投資信託(主として外貨建資産または株式以外の資産に運用され、運用資産の外貨建資産割合または非株式割合が50%超の証券投資信託)
……収益分配金の4分の1が益金不算入の対象となります。 - 特定外貨建等証券投資信託(主として外貨建資産または株式以外の資産に運用され、運用資産の外貨建資産割合または非株式割合が75%超の証券投資信託)
……外国法人の配当金と同様の理由から、益金不算入の対象となりません。
特定株式投資信託の収益分配金
- 特定株式投資信託(その信託財産を株式のみに対する投資として運用することを目的とする証券投資信託で、租税特別措置法第3条の2に規定するもの)
……その収益分配金は、すべて配当金から構成されているため、その全額が益金不算入の対象となります。 - 外国株価指数連動型特定株式投資信託(特定株式投資信託のうち外国株価指数に採用されている銘柄等に投資を行うもので租税特別措置法第9条に規定するもの)
……外国法人の配当金と同様の理由(益金不算入の制度が内国法人と株主との国内における二重課税を排除するために設けられているため)から、益金不算入の対象となりません。
2.益金不算入の計算~2つの区分
法人が、他の法人から配当を受け取った場合、企業会計上は、受取配当金として収益計上されます。しかし、法人税では、法人間配当の二重課税を排除するためなどの理由から、益金不算入としています。
関係法人株式等に係る配当等の額と、関係法人株式等以外の株式等に係る配当等の額と2つに区分して益金不算入の計算が行われます。
- 関係法人株式等
配当等の額-控除負債利子
事業を子会社形態で営む場合と支店形態で営む場合との税負担の公平を図るために、親子会社間のような、企業支配的な関係を有する法人の配当等の額については100%非課税としています。 - 関係法人株式等以外の株式等
(配当等の額-控除負債利子)×50%
企業支配的な関係を有しない法人の株式は一種の投資物件という性格があるため、50%だけ非課税とすることにしています。 - 「受取配当等の益金不算入額」=1.+ 2.
※関係法人株式等とは?
他の法人の発行済株式など(自己の株式等を除く)の25%以上を、その配当額の支払に係る効力が生ずる日以前、6ヶ月以上引き続き有している場合の、当該他法人の株式等をいいます。
3.控除負債利子の範囲・簡便法原則法
原則法と簡便法の選択
受取配当金を益金不算入とするのであれば、その配当の元本となる株式を購入するために借入れた負債利子について考慮しなければ、費用収益の対応が保てなくなってしまいます。
そこで、受取配当等の益金不算入額についても、配当金の収入金額から必要経費を控除した金額をベースに計算することにしています。
控除負債利子額の計算方法には、『原則法』と『簡便法』があります。
関係法人株式等及び関係法人株式等以外の株式等に係る配当等について、原則法又は簡便法により計算した控除負債利子を控除します。つまり、原則法を採用するか簡便法を採用するかは法人の任意選択となりますが、関係法人株式等に係る配当等及び関係法人株式等以外の株式等に係る配当等について、統一適用しなければなりません。
したがって、原則法による益金不算入額と、簡便法による益金不算入額のいずれか多い方を選択すればよいことになります。
<原則法>
受取配当等の元本である株式等を取得するための借入金による利子がある場合には、その株式等に対応する部分の金額を受取配当等の額から控除します。原則法により控除する金額の計算は次の算式によります。
支払利子×前期末・当期末の株式等の簿価÷控除負債利子=前期末・当期末の総資産の簿価
支払利子の範囲
〔支払利子に含めるもの〕
・借入金の利子
・社債の利子
・手形の割引料
・社債発行差益金の当期償却費
・取得価額算入負債利子のうち当期対応分
〔支払利子に含めないもの〕
・売上割引料
・利子税・納期限延長に係る延滞金(含めないことができる)
・割賦購入資産の取得価額に含めた割賦利子
株式等の簿価
税務上の金額であることに留意しなければいけません。
総資産の簿価
会社上の帳簿金額を使用することに留意しなければいけません。ただし、圧縮記帳や特別償却などの適用を受けた場合、損金経理直接減額法若しくは積立金積立法を選択した法人や損金経理もしくは、準備金方式を選択した法人それぞれで、総資産の簿価が変わってしまいますので、公平性を保つために、圧縮積立金や特別償却準備金の金額を総資産の簿価からマイナスして調整します。
貸倒引当金を貸借対照表上で貸方表示している法人と、注記表示している法人についても同様に、注記表示している法人については総資産の簿価にプラスして調整します。
他に減価償却累計額により減価償却の計上をしている場合も、直接減額方式を採用している法人に合わせるようマイナスして調整します。
<簡便法>
受取配当等の元本である株式等を取得するための借入金による利子がある場合には、その株式等に対応する部分の金額を受取配当等の額から控除します。簡便法により控除する金額の計算は次の算式によります。
支払利子×控除割合=控除負債利子
控除割合の留意点
過去のデータによる割合を使用して、簡便的に当期の控除負債利子を計算しようというものです。過去のデータは基準年度における原則法により計算した数値を使用します。
- 基準年度(平成10年4月1日から平成12年3月31日の間に開始する各事業年度)
- 端数処理(小数点以下3位未満切り捨て)
- 関係法人株式等、関係法人株式等以外の株式に係る控除割合をそれぞれ算出し使用します。
具体的には次のような算式で計算します。
基準年度におけるそれぞれの株式等に係る原則法により計算した控除負債利子の額÷基準年度の支払利子総額=それぞれの控除割合(小数点以下3位未満切り捨て)
4.短期所有株式などの配当
配当等の額の支払に係る基準日以前1カ月以内に取得し、かつ、その基準日後2カ月以内に譲渡した株式等を短期所有株式等といいます。
短期所有株式等に係る配当等の額は、受取配当等の益金不算入の対象にはなりません。
※配当の基準日は、基本的にその株式の発行法人の事業年度の末日であり、自社の事業年度ではありません。
※会社法の適用を受ける法人は、一定の要件を満たす場合には事業年度の中途で配当を行うことができます。この場合、それぞれの配当の基準日をもとに短期所有株式等の判定を行います。