消費税節税方法-簡易課税、原則課税、税抜き・税込み処理
簡易課税方式で消費税節税
節税に関していえば、消費税は非常に節税が難しい税金です。これは、消費税が消費者から税金を預かり、それを納付している税金だからです。しかし、全く節税ができないわけでもありません。
消費税の計算には、簡易課税方式と原則課税方式とがあります。
簡易課税方式での節税方法
簡易課税方式で計算する場合、経費をどう使っても納税額は変わりません。売上に対する消費税額にみなし仕入率を掛けて算出しますので、売上高で納税額が決まってきます。
売上高とみなし仕入率で納める消費税が決定するのですから、節税するためには、売上高を少なくなるように、みなし仕入率が高くなるようにすればいいのです。
■消費税課税売上高を少なくする
①ビジネスモデル自体を手数料を中心とした取引形態に変える
何かを仕入れてそれを他に売っている場合でも、実際はほとんどこちらに手数料程度の収入しかなく、実態として手数料売上にすることに問題が無い場合には、変更できるかもしれません。
ただしその場合に、形だけ手数料売上として、実際商品がこちらの会社を通じて売り先に行っている場合などはできません。
②手数料等を売上の値引きにする
得意先から売上の入金がされる場合に振込手数料が引かれて入金される場合があります。その場合に、その手数料を売上の値引きと考えて処理すればその分、売上高が少なく計上できます。
また、仕入先からの販売奨励金などがあった場合、それを収入と考えるのではなく、仕入れ値引きと処理すると、売上を少なくすることができます。
■みなし仕入率を高くする
みなし仕入率は、業種毎にその率が決まっています。
区分 | 業種 | みなし仕入率 |
第1種事業 | 卸売業 | 90% |
第2種事業 | 小売業 | 80% |
第3種事業 | 製造業・建設業・農業等 | 70% |
第4種事業 | その他の事業(飲食店業・金融保険業) | 60% |
第5種事業 | 不動産業・運輸通信業・サービス業(飲食店業を除く) | 50% |
当然、仕入割合が通常高いと考えられる業種ほど高いみなし仕入率になっています。高いみなし仕入率に該当すれば、その分支払った消費税を多く計算できますから、結果的に有利になります。
一般的に会社というのは、1つの業種のみを行っているというケースは少ないでしょうから、このみなし仕入率も原則その業種毎に個別に選択して計算することになっています。
「卸売業」と「小売業」の違いは、消費税法上では、仕入れてきた商品を形状など変えずに『事業者』に対して売るのが卸売業で、『一般消費者』に売るのが小売業となっています。
ということは、表向きは一応小売業であっても、実際は事業者(事業者というのは会社のすべてと個人事業者のこと)に販売しているものも結構あるということになります。
したがって、小売業ではなく卸売業のみなし仕入率を使える場合が多いということです。
簡易課税方式選択の注意点
- 簡易課税は2年間継続しなければならない
- 基準期間の売上高が5千万円以下でなければならない
- 消費税の還付が受けられない
特例を利用して節税
今見たように業種毎にみなし仕入率を区分けするというのが原則なのですが、特例があります。
このみなし仕入率の特例は、「1つの業種で75%以上の課税売上高があれば、他の業種にもそのみなし仕入率を適用することができる」というものです。
ということは、例えばみなし仕入率第3種である製造業が、副業的に第5種の不動産経営もやっていたとしてその割合が売上ベースで2割ぐらいとします。
すると、第3種である製造業の売上高が全体の75%以上を占めていますから、第5種の売上も含めてすべての売上を第3種として消費税を計算することが出来ます。
このみなし仕入率の特例は、うまく使えばかなりの節税になります。
原則課税方式で消費税節税
消費税の計算方法を届出しない場合は、原則課税方式となります。
原則課税方式は、売上に対する消費税から仕入など経費にかかった消費税を差し引いて納付税額を算出します。仕入にかかった経費とは、業者等に支払った経費全てのことをいいます。
これを利用すると、仕入や購入をした場合、未払い計上であっても売上に対する消費税から差し引くことができるのです。決算間際に利用できる手段だと思います。
原則課税方式の場合、消費税の還付を受けることができます。(簡易課税方式では還付を受けることはできません)
経理の処理方法による節税
会社の経理処理には、税抜処理で行う方法と税込処理で行う方法とがあります。
税込処理とは消費税込みの金額で経理処理をすることで、税抜処理は消費税抜きの価格で経理処理することです。
法人税の節税を考えると、一般には税抜処理のほうが節税になるといわれています。
例えば、消耗品の場合、その期の損金として処理できるのは原則10万円未満のものです。税抜きで99,800円の備品を購入した場合、税抜処理をしていれば消耗品として損金計上ができます。しかし、税込処理を選択した場合、税込価額は104,790円となり、原則として損金ではなく資産計上しなければなりません。
また、接待交際費は、期末資本金が1億円以下の中小企業であれば、支出した金額の10%は損金計上されず、資本金が1億円超の会社では全額が損金としては認められません。つまり、税込処理をすると消費税分の金額が膨らむことになり、その分不利になるというわけです。
注意点
節税面のみを考えて経理処理を選択するのはおすすめしません。なぜなら、経理処理において重要なことは、納付税額を正確に把握することだからです。
税抜処理を行うと、受け取った消費税が仮受消費税にあたり、原価・経費等にかかった消費税が仮払消費税にあたります。この差引額が概算納付税額を表します。
つまり、原則課税方式を採用している場合、差引額で消費税額がわかるのです。
一方、簡易課税方式を採用している場合には、売上高から消費税を計算するので、正確な税込売上高を把握する必要があります。
つまり、簡易課税方式の場合、税抜処理をしても差引額自体に意味はなく、消費税概算額は別計算が必要になってくるのです。
したがって、原則課税方式を採用している場合は税抜処理を行い、簡易課税方式を採用している場合は税込処理がよいでしょう。