会計知識を豊富に持ちながら、食いっぱぐれた男の話とは?
- 会計知識が豊富にあると、経営の事がわかりますか?
- 会計だけでは救われない!具体的な“知識”を教えてくれ!
- 全てのビジネスのゴール ~ ROAとは?
- あなたの財務センスを磨く1つ目のウエポン
- あなたの財務センスを磨く2つ目のウエポン
- 「企業のゴール」であるROAを高める方法
- 誰も語らなかった“ビジネスの2つの基本形”とは?
1.会計知識が豊富にあると、経営の事がわかりますか?
最初にあなたに質問です。
「会計知識が豊富にあると、経営の事がわかりますか?」
おそらく、これに対して、自信を持って答える事ができる人は、そういないでしょう。逆に言うと、会計を勉強し始めたときに、“何を期待していたか”、“どんなメリットがあると思っていたか”、思い出して下さい。
- 「会計を知ると、会社のことがよくわかるそうだ。」
- 「隣の席のあいつより出世するには、会計が不可欠らしいぞ」
- 「会計知識があると一生食いっぱぐれがないらしいぞ」
- などなど・・・
会計を知ることで得られる一般的なメリットは、そんなところでしょう。しかし、それは思いこみにすぎません。
実際は、そのような知識だけでは、ビジネスの現場では、意志決定の現場では、間違った判断をしてしまいます。
2.会計だけでは救われない!具体的な“知識”を教えてくれ!
会計は単なる知識です。仕訳のルールから始まって、流動資産や固定資産、資本剰余金や利益剰余金、営業利益や経常利益…。
それらは全て断片的な知識にすぎません。あなたは、財務分析の書籍を購入したことがあることでしょう。また、その中で財務分析を学んだこともあると思います。それどころか、財務分析の資格を取得するために、一所懸命に知識を詰め込み、計算のスピードを速めたことがあるかもしれません。
しかし、その計算の結果が、なぜ必要なのか考えたことがありますか?
「考えたことはあるけど、わからなかったんです。教えて下さい。どのような比率を重視すればよいのですか。」
それは、ズバリ、ROA(資産利益率)です。
3.全てのビジネスのゴール ~ ROAとは?
ROAがなぜ大事なのか。まずは、ROAの算式を考えてみましょう。
ROA=利益÷資産
になります。
つまり、どれくらいの“資産”を使って、どれくらいの“利益”を叩き出しているかが重要です。
企業は、まず、出資者から資金を集めてスタートします。その出資者から得た資金を使って経営をし、利益を得るのです。資金=資産、を使ってより高い利益を得るのが当たり前なのです。企業資金の循環運動という財務諸表論の理屈は、誰でも知っていますね?

4.あなたの財務センスを磨く1つ目のウエポン
では、企業はROAだけを目標にしていくだけでいいかというと、それだけでは非常に動きにくいですね。ROAよりも身近な指標が必要です。
その一つ目の指標が、資産回転率です。
「ちょっと待って!資産回転率って、あの売上を総資産とか、在庫で割る計算式?あれのどこが大事なの?」
あなたは、そう疑問を持つことと思います。しかし、考えて欲しいのです。資産の回転のスピードを測定するということは、売上の獲得効率を計る重要な指標になるのです。
算式は、このようになります。
資産回転率=売上高÷総資産
この単純な算式が、財務上極めて大事な算式になります。
「そういえば、資産回転率って、いろんな算式があるんじゃなかったっけ?」
はい、あります。たとえば、以下のようなものですね。
- 在庫回転率=売上高÷棚卸資産(商品・製品・原材料など)
- 売掛債権回転率=売上高÷売掛金・受取手形
①同業他社と比較する、②過去と比較することで、悪化しているか、改善しているかが明確化されます。
しかし、大事なのは、少ない資産、少ない在庫で売上を上げている、債権の管理がきっちりしている、という小資産で売上を上げる“くせ付け”なのです。
そのくせ付けを、債権を回収するしくみを社内に構築する、在庫を少なくするしくみを社内に構築する、といった戦術を常に議論することが大事です。“しくみ”といいましたが、これは、在庫や債権の管理を徹底することで、社内に欠けているPlan-Do-See-Checkの体制を模索することになるので、粘着的な仕事が大事になります。
さらに、戦略的な発想が出てきます。資産回転率を高めるということは、先ほど出てきた“総資産”、“在庫”、“売掛債権”などを少なくすることを意味しています(分子を少なくするということですね)。であれば、いっそのこと、極限まで消滅させるという手段もありえます。
- 在庫を持たない商売はどうでしょう?
- 売掛債権を持たない商売はどうでしょう?
- 総資産を限りなく少なくするために、有形固定資産を持たない商売はどうでしょう?
- 在庫を持たないマッチングビジネスは?
- 現金で決済するだけの商売は?
- 建物や土地を持たない、つまり店舗や物流センターや工場を持たない商売形態は?
ろいろな方向性が出てくるわけですね。
5.あなたの財務センスを磨く2つ目のウエポン
あなたにお伝えする2つ目の指標は、利益率です。
「利益率が大事なことぐらい誰でも知っているぞ!」
そういう声が聞こえてきそうですね。しかし、何を根拠に利益率が高い方がいい会社と言えるのですか?
事業特性により、経常利益率や営業利益率が1%しか出ない事業は、「おいしくない事業」と言えるのですか?
言い方を変えましょう。
「利益率と回転率を、両方ともに考慮する必要があるのではないですか?」
6.「企業のゴール」であるROAを高める方法
「須貝さん、わからないよ。なんで、利益率や回転率を同時に考えなければならないの?」
答えは、以下の算式にあります。
資産利益率(ROA)=売上高÷資産(資産回転率)×利益÷売上高(利益率)
これは、ROAを分解する算式で、財務分析の世界では極めて有名ですが、なぜ大事なのか、歴史上忘れ去られてしまったものです。
あなたに、質問です。
「この算式が、非常に重要な理由を教えて下さい。」
答えは、
「ビジネスの目標はROAを高めることにある。そして、ROAは、①資産回転率、②利益率を改善することで、上昇させることができるから。」です。
この算式は、数値のお遊びではありません。資産回転率と利益率を高めることがビジネスの基本だということです。
そして、更に言うなら
「ビジネスには、資産回転率型のビジネスと、利益率型のビジネスがある」という事実です。
7.誰も語らなかった“ビジネスの2つの基本形”とは?
ビジネスには、資産回転率型のビジネスと、利益率型のビジネスがある、という単純な事実です。
回転率型のビジネスとは、ディスカウント事業やスーパーマーケット事業などです。逆に利益率型の事業は、ブランド品を豊富に取り扱った専門店や、不動産業をイメージして下さい。
ディスカウント事業は、非常に少ない利益率で商売しています。しかし、その少ない利益率で、ROAを計算してみると非常に高い数値を叩き出していることに驚くことでしょう。
そうなんです。利益率が薄くても、回転率が高ければ、つまり、少ない資産で商売をしていれば、ROAは高くなるのです。
逆に、利益率型の商売は、利益率が高い(売価が高く、粗利益率が高い)ので、凄まじいROAになるかと思いきや、意外に落ち着いた数値になります。
結論としては、商売には2つのタイプがあり、どちらかの比率を高めれば、それで良いのです。
「両方高めることができないの?僕なら、そうしたいなあ」気持ちはわかりますが、障害があります。
1つ目は、世の中のビジネスには、薄利多売の回転率型か、回転を少なくして利益を叩き出すタイプか、のどちらかの特性があるということです。
2つ目は、両方を高めることは、ニッチビジネスでしか、成立しないことです。起業家にとってみると、この“両者を高める戦略”はいい選択肢でしょう。
次回は、“ROAを高める本当の話”を進めていきます。


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