繰延資産とは?
1.繰延資産とは?
繰延資産とは、会社が支出する費用のうち、支出した効果が支出の時だけでなく将来にも及ぶものをいい、一時的に費用にするのではなく、その効果の及ぶ期間に分けて費用計上していきます。このために、「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」を使用します。
<会社法による繰延資産の規定の廃止>
商法では8種類の繰延資産が規定されていましたが、会社法施行に伴い、繰延資産の範囲は会社法においては明確に規定されなくなりました。
会社法が繰延資産の計上根拠を設けなかった理由は「政策判断に基づいて積極的に資産計上を認める規定を設けることは適当ではなく、また、会計慣行に委ねることとしているので積極的に資産計上を認める規定を設けることは適当ではない」ためとのことです。
2.会社法によって変更された繰延資産
- 社債発行差金
会社法では、払込みを受けた金額が債務額と異なる社債については、事業年度の末日における適正な価格を付すことができるとされました。
そのため、これまで繰延資産として取り扱われてきた社債発行差金に相当する額は、国際的な会計基準と同様、社債金額から直接控除することとされました。
なお、社債を社債金額よりも低い価額または高い価額で発行した場合には、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とします。 - 建設利息
会社法において、建設利息は廃止されました。 - 新株発行費等
会社法では新株発行も自己株式の処分も募集株式の発行等として同じ手続きで行います。そのため、新株の発行に係る費用だけでなく自己株式の処分に係る費用も対象に追加し、「株式交付費」に項目名を改められました。
「株式交付費」は原則として、支出時に費用計上します。
ただし、企業規模拡大のために行う資金調達等の財務活動に係るものは「繰延資産」として計上できます。そのような財務活動には、組織再編の対価として株式を交付する場合も含まれます。
株式分割や株式無償割当に係る費用は、上記の財務活動に係る費用ではないため、繰延資産としては計上できず、支出時に販売費又は管理費として計上します。
3.企業会計原則の繰延資産
- 創立費
設立登記までに要した費用。発起人への報酬、設立登記の登録免許税等。償却期間は5年。 - 開業費
設立登記後営業開始までに要した費用、償却期間は5年。 - 開発費
新技術、新資源の開発、新市場の開拓に要した費用。償却期間は5年。 - 株式交付費
会社設立後、新たに株式を発行するために要した費用。償却期間は3年。 - 社債発行費
社債発行に要した費用。償却期間は社債の償還期限内。
4.税法上の繰延資産
法人税法で定める償却期間に応じて、計算した償却限度額の範囲内で償却を行います。
法人が支出する以下の費用(資産の取得に要した金額及び前払費用を除く)のうち支出の効果が、その支出の日以後1年以上に及ぶものをいいます。
- 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
- 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立退料その他の費用
- 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
- 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
- 上記@〜Cに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
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