就業規則の基本と作成注意点
1.就業規則が必要な学校
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。また、これを変更するときも届け出ることが必要です。学校ですから、労働者(教員・事務員)が10人に満たないということはあまりないと思いますので、基本的に、学校には就業規則が必要だということになります。
公立学校においては、「地方公務員法」や「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」などによって指針となるべき法律が整備されていますが、私立学校の場合、各学校によってそれぞれ対応していかなければならない場合が多くあります。 就業規則を定めるに当たっては、公立学校の例に倣うのか、また公立学校では適用される法令が私立学校では適用にならない部分をどう取り決めるのかなどを考慮しながら進めなければなりません。
2.絶対的記載事項と相対的記載事項
絶対的記載事項(必須規定事項)
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
- 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的記載事項(定めがある場合のみ記載)
- 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
- 臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
- 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
- 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
- そのほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
3.就業規則の周知と効力
就業規則の周知方法
就業規則は労働者に周知させなければならない周知義務があります。 その方法としては、
- 常時各作業場所の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
- 書面を労働者に交付すること
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
と、労働基準法で定められていますので、学校では職員室に場所を定めて閲覧用の就業規則を備えておけばよいでしょう。校舎が複数ある場合であっても、職員室が一つであれば、職員室に備えておけば足ります。なお、分校のある場合は、分校の職員室にも備えておかなければなりません。
就業規則の効力の制限
就業規則は、強行法規に反することはできません。労働基準法の諸規程に違反する就業規則は、その限りで無効となり、労働基準法の定める基準によって置き換えられます。就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となり、就業規則で定める基準によることになります。
4.就業規則の目的・適用範囲
前文や総則などで、学校の方針、社会的役割、卒業後の生徒の活躍などを教員に理解してもらい、教職員のモチベーションアップ・帰属意識の向上に繋がるように作成することが必要です。
もちろん、機密保持に関しては他業界より厳しい規則が必要だと感じます。
また、就業規則の目的、適用範囲などについては、ここで明確にした上、雇用通知書や労働条件明示書などにより、適用する就業規則の条項を定めておくとよいでしょう。
5.採用・異動・服務規律・研修・賃金
採用については、ある一定の年齢に達する人の採用は除外し、雇用契約期間も明記しましょう。教員・事務職員などのスキルの確認や、資格保持の確認を行う場合は、その旨を記載します。どの程度のスキルを必要としているのか、できるだけ明記しましょう。
また、採用したけれど、学校に合わないケースもあります。学校は利益追求を目的とした企業とは異なり、生徒の教育や生徒のためになることを第一に考えなければなりません。ですので、教職員の試用期間を設けることも必要になってきます。試用期間については、6ヶ月程度が普通です。この試用期間を勤続年数に通産するのかしないのかもはっきりさせておきましょう。
昇給・昇任についても、あいまいな部分が多いので、できるだけ明白にし、教員のモチベーションを上げることが必要です。
人事異動や赴任などについても明記が必要です。また、必要であれば、教員の研修についても記載しておくといいでしょう。
また、教員の服装やみだしなみを整える場合にも、役立ちますので、服務規律条項には、風紀をみださないような配慮をしましょう
6.労働時間・休憩・休日
学校は、人間相手ですから、アツイ先生ほど残業や休日に学校に出てくることが多くなります。指揮命令があやふやなため、時間外勤務と認められる場合とそうでない場合をなるべくわかりやすく、具体的に記載しましょう。
変形労働制、みなし労働時間制、裁量労働時間制などを有効に利用することも考慮してもいいかもしれません。もちろん、これにすれば残業代を支払わなくていいというわけではありませんが。
7.退職・解雇・懲戒
契約期間中の解雇や、退職願いなどの場合の取扱や、懲戒については、特に細かく規定します。
特に懲戒解雇の場合は、列挙主義ですので、想定できる全てについて記載しておかないと、懲戒解雇したいのにできない。ということになりますので、注意が必要です。
また、教師と生徒間のセクハラ問題など、学校にとっての致命傷になるトラブルの対処や、学期途中での退職・解雇などについても、細かい規定が必要かと思います。