学校経営サポート シリウス総合法務事務所

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私立学校教職員の解雇

  1. 解雇知識の必要性と合理的理由
  2. 労務提供の不能、労働能力又は適格性の欠如
  3. 規律違反(懲戒解雇)
  4. 経営困難による整理解雇
  5. ユニオン・ショップ協定による解雇
  6. 労働基準法における解雇の規定

1.解雇知識の必要性と合理的理由

学校法人を運営していくためには、学内の不良労働力排除していかなければなりません。この不良労働力の放逐の一つの方法として、解雇があります。

民法では

「期間の定めのない雇用契約は、いつでも解約の申入れをすることができる。」「期間の定めのある場合であっても、やむを得ない事由があるときは、直ちに解除できる」として解雇の自由が規定されています。

その一方で、

労働基準法では

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めており、解雇権の濫用を禁止しています。

その他にも、労働組合法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など、解雇の自由を制限する法律も制定されています。

したがって、

「合理的な理由」「やむを得ない事由」とはどのようなことなのかを把握しておく必要があります。

以上が代表的な理由・事由になります。これらについて、詳しく説明していきます。また、学校法人は一般企業と異なり、生徒のことを第一に考えなければなりません。年度の途中での解雇は、学校への信頼が薄れる原因ともなりかねませんので、特に慎重に行わなければなりません。

2.労務提供の不能、労働能力又は適格性の欠如

この場合は、客観的に見て労働能力や適格性が著しく低い場合に限定されます。ただ単に、「授業がわかりにくい」などの理由では解雇できないということです。

3.規律違反(懲戒解雇)

懲戒は、教職員の服務規律違反に対する制裁であり、労働契約や就業規則根拠とします。本人に対する戒めと他の教職員に対する戒めとを目的としています。

懲戒解雇は、懲戒の中で最も厳しい制裁です。公立学校の教職員は、地方公務員法に懲戒事由が定められています。しかし、私立学校の教職員はそのような定めがありません。したがって、「制裁の定め」として懲戒について就業規則で定めておくのがよいでしょう。 規定の仕方としては、公務員法に準じた懲戒事由を設けるとともに、各学校に合わせて、懲戒事由を網羅することが必要になります。

以上を基軸に、非行について細かく規定しましょう。また、他の懲戒処分(降格・減給・出勤の一時停止など)との調整も必要です。

4.経営困難による整理解雇

学校法人は、近年そしてこれからますます加速するであろう、少子化の影響を直接受ける法人の一つであることは間違いありません。生徒数減少による学級数減少や廃校によって人員整理のために行う解雇を整理解雇といいます。

整理解雇は、単に就業規則に根拠規定があるというだけでは、解雇権の濫用として無効となることがあります。 整理解雇が解雇権の濫用になるか否かは、過去の判例によって判断基準が定式化されています。

<整理解雇の四要件>

① 人員整理の必要性
② 解雇を回避する努力
③ 被解雇者選定の合理性
④ 労働者側への説明、協議

人員整理の必要性

 経営困難を克服するために人員削減を行う必要性が、客観的に存在しなければなりません。 「人員整理の必要性があるというためには、単なる生産性向上や利潤追求のためというだけでは足りず、客観的に高度な経営上の必要性の存在を要するが、人員整理をしなければ企業の存続維持が危殆に瀕するという差し迫った状況までは必要でないものというべきである」との判例もあります。
  また、人員削減措置の決定後に多数の新規採用を行った場合や、大幅な賃上げを行った場合は、人員整理の必要性が否定されます。

解雇を回避する努力

 使用者が、整理解雇を避けるために、雇用調整措置を講じる努力をしたことが必要となります。
具体的には、新規採用・中途採用の停止、配置転換、姉妹校への出向、希望退職者募集などです。中でも、希望退職者募集が重要な要素であるといえます。 この場合、期間の定めのある労働者の雇止めが、期間の定めのない労働者の希望退職者募集に先立って行われてもやむを得ないという判例もあります。

被解雇者選定の合理性

 被解雇者の選定基準及びその具体的適用には合理性が必要です。
選定基準としては、労働者の地位・身分の臨時性・代替性、年齢等労働者自身の転職の容易性、過去における勤務態度や勤務成績、将来における貢献の期待度、労働者の生活事情等が挙げられます。

労働者側への説明・協議

 整理解雇は労働者に帰責事由がない状況下で行われる解雇ですので、使用者は、人員整理の必要性と内容について、労働組合又は労働者に対して説明を行い、かつ十分に協議して納得を得なければなりません。

5.ユニオン・ショップ協定に基づく解雇

 ユニオン・ショップ協定とは、労働組合が使用者との間で結ぶ労働協約で、労働者は雇用されてから一定期間内に特定の労働組合に加入することを要し、組合員たる資格を失ったときは使用者から解雇される制度です。

ユニオン・ショップ協定が労使間で結ばれている場合、使用者は、その労働組合に加入しなかったり除名されたり脱退した労働者に対し、労働協約上の解雇の義務がありますから、このような義務に基づく解雇は解雇権濫用になりません。

6.労働基準法における解雇の規定

解雇予告

解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。30日前に予告をしなかった場合は、解雇予告手当てとして30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

例外としては、以下の場合があります
1.天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
2.労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合(懲戒解雇)

解雇予告の適用除外

1..日日雇い入れられる者
2.2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
3.季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
4.試用期間中の者

但し、契約更新や試用期間が14日以上あった場合には除外されません。

解雇禁止・制限

以下の労働者の解雇について制限を設けています。

  1. 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇できません。
  2. 産前産後の女性が就業禁止規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇できません。

ただし、使用者が、打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りではありません。

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