私立学校教職員の労働時間・休日・休暇
1.労働時間
学校法人の教職員であっても、労働基準法のもと、1日8時間、週40時間を超えて勤務時間を定めることは出来ません。
時間外勤務をさせたい場合は?
公立の高等学校以下の学校の教職員には、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」というものがあり、学校行事等で臨時に勤務する必要がある場合には、所定労働時間を超えて勤務させることが出来ますが、私立学校にはこの法律の適用がありませんので、時間外労働をさせる場合には三六協定を締結し、超過勤務手当を支払う必要があります。 したがって、行事等に対応出来るよう、あらかじめ就業規則で変形労働時間制が取れるよう定めておくとよいでしょう。
三六協定とは?
使用者は、労働組合または労働者の過半数の代表者と労使協定を結ぶことにより、労働者に法定の労働時間を超えて、または法定休日に労働させることができます。「時間外・休日労働に関する労使協定」は、労働基準法第36条にもとづく協定であることから、一般に「三六協定」といわれています
時間外労働の対価は?
非常事由や三六協定によって時間外労働をさせた場合は、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。 しかし、ここでいう時間外労働とは労働基準法上の法定労働時間を超えた場合を指します。 したがって、1日の所定労働時間が6時間の者が8時間労働したとしても、法定労働時間内ですので割増賃金を支払う必要はありません。あくまでも8時間を超えた分のみに割増賃金の支払い義務が生じます。
三六協定の例外
三六協定を結ぶ以外に適法に時間外・休日労働を行える場合があります。
・ 災害等により臨時の必要がある場合
・ 公務により臨時の必要がある場合
です。
2.休日・休暇
- 小学校の授業時数は年間35週(ただし、第1学年は34週)以上
- 中学校は35週以上
- 高等学校(全日制課程)年間標準35週、週当たり授業時間数は標準30単位時間、1単位時間は標準50分
- 幼稚園は教育週数とし原則39週以上、1日の教育時間は標準4時間、
- 大学は、定期試験等の期間を含め、原則として年間35週
以上が学習指導要領や教育要領、大学設置基準で定められている授業時間数ですので、これらを加味した上で、休業日を定めなければなりません。
学校教育法施行規則による「休業日」は児童生徒から見た『授業が行われない日』のことであって、教職員における「休日」ではありません。 夏休み等の長期休業日に関しては、自宅研修扱い、特別休暇、年次有給休暇を充てるなど、学校によってその形態は異なります。
「休業日」は就業規則での規定が重要
いずれにしても就業規則に規定しておく必要があります。 特に、年次有給休暇をあてる場合、計画年休制度を取り入れるなどの検討が必要です。なぜなら、労働基準法で年次有給休暇の自由な取得及び使途が保護されているため、労使協定で取り決め、就業規則に年次有給休暇の計画付与についての規定を設けておく必要があるでしょう。
年休の計画的付与とは?
労働基準法にもとづき、教職員がその年に取得できる年休のうち「5日を超える日数分」については、学校側が日を指定し、その日に年休を付与することができます。これを「年休の計画的付与」といいます。 ただし、残りの5日分は個人的事由による取得のために留保しておかなければなりません。
年休の計画的付与の方法
(1) 全体での一斉付与
学校全体を特定の日に休校とし、教職員に対し同一の日に年休を与えるもの。
(2)グループ別交替制付与
各部署をいくつかのグループに分け、交替で年休を付与するもの。
(3)個人別付与
個人別に年休付与計画表を作成し、付与するもの。
いずれの場合にしても、年休の計画付与を実施する場合には、労使協定を結ぶことが必要です。労使協定で定められた休暇日は、労働者にとって年次有給休暇となります。
3.短時間労働者の有給休暇
労働基準法では「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」と規定しています。したがって、短時間労働者であってもこれを満たす労働者には年次有給休暇を付与しなければなりません。ここで注意すべき点は、年次有給休暇の権利は基準日に発生するため、所定労働日数は、年次有給休暇が付与される年度における所定労働日数ということになります。つまり、週所定労働日数が前年度は2日であったものが、当年度に3日になった場合、3日として付与しなければならないということです。
短期労働者の有給休暇はどれくらい?
以下のような人は通常の労働者と同じ日数になります
・週所定労働時間が30時間以上の者
・週所定労働日数が5日以上の者
・年間所定労働日数が216日を超える者
年度の途中で所定労働時間が変更になった場合は?
年度の途中で所定労働日数が変更しても、基準日において付与された年次有給休暇の日数は変更しません。
全労働日の8割以上の出勤とは?
「全労働日」とは、労働契約上労働義務の課せられている日をいいます。一般には、1年の総暦日数から所定の休日を除いた日がこれに該当します。したがって、休日労働をしたとしても、休日は労働日に含まれません。ただし、以下の場合は出勤したものとみなされます。
- 業務上の負傷、疾病による療養のため休業した期間
- 労働基準法の規定による産前産後休業をした期間
- 育児、介護休業法に規定する育児介護休業をした期間
- 年休を使用した日
- 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
なお、生理休暇、慶弔休暇その他の就業規則に定められた休暇を使用した日をどのように取り扱うかは、使用者が判断することになります。
4.私立学校教職員・短時間労働者の有給休暇日数表
週所定労働日数 | 1年間の所定労働数 | 雇い入れの日から起算した継続勤務期間 | ||||||
6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月 | ||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |