私立学校教職員の労働契約
1.労働契約内容と法律・規律
私立学校の教職員は、学校法人と労働契約を締結することになります。教職員の個別的労働関係については、労働基準法を中心とする各労働法が全面的に適用され、就業規則に則って労働条件が定められます
労働基準法
個別の労働関係を規律するために、柱となるべき法律で、労働条件の最低基準が定められています。 労働基準法第13条では『この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。』と規定されています。
学校教育法・学校指導要領
通常の企業労働者と異なり、人を教育する立場にある教員についての労働条件ですから、学校教育法や、各学校の指導要領などにも留意し、労働契約を締結します。
慣習・慣行・労使交渉
法律や就業規則等で定められていない事項については、個々の労働契約で定める必要があります。永年の慣行、労使交渉の場で取り決めがなされたりすることもあります。
必ず明示(書面) | 学校に定めがある場合明示 (書面or口頭) |
労働契約の期間 | 退職手当 ・適用教員の条件 ・決定方法 ・計算方法 ・支払方法 ・支払時期 |
就業場所 | |
従事する業務内容 | |
労働時間について ・始業及び終業時刻 ・残業の有無 ・休憩時間 |
臨時に支払われる賃金 ・賞与など |
安全・衛生に関すること、 | |
賃金について ・賃金の計算方法 ・支払の方法 ・締め切り・支払日 ・昇給 |
災害補償及び業務外の傷病扶助に関すること |
表彰・制裁に関すること、 | |
休職に関すること | |
職業訓練に関すること | |
退職について | 教員に負担させるべき食費・作業用品などに関する事項 |
2.短時間労働者
短時間労働者の雇用に関しては、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム労働法)が定められています。 短時間労働者も労働基準法における労働者ですので、労働契約書や就業規則等で労働条件を明示しなければなりません。
適用される法律、適用除外される法律
短時間労働者も、「労働基準法」「男女雇用機会均等法」「労働安全衛生法」「労働者災害補償保険法」等が適用されます。ただし、「育児介護休業法」「雇用保険法」「私立学校教職員共済法」については、適用が除外されることもあります。
他の事業場と兼職している場合の労働時間
ある会社に勤務している者が講師として学校法人に兼職している場合、両方の労働時間が通算されることになります。(休日に関しては労働基準法では通算の規定はありません)
3.期限付き雇用契約
私立学校では、常勤講師であれ非常勤講師であれ、1年以内の契約での雇用が多く見られます。期限付雇用契約においても、各労働法が適用されるのが原則ですが、適用が除外される場合がありますので注意が必要です。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(育児休業)
以下のいずれにも該当する場合に限り適用されます。
・引き続き雇用された期間が1年以上である者
・その養育する子が1歳に達する日(以下「1歳到達日」という。)を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者(当該子の1歳到達日から1年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。)
(介護休業)
以下のいずれにも該当する場合に限り、適用されます。
・引き続き雇用された期間が1年以上である者
・介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日(以下「93日経過日」という。)を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者(93日経過日から1年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。)
雇用保険法
・1週間の所定労働時間数が20時間未満の労働者には適用されません。
・短時間労働者(1週間の所定労働時間が、同一の適用事業に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短く、かつ、30時間未満である者をいう。)であって、季節的に雇用される者又は同一の事業主に引き続き被保険者として雇用される期間が1年未満である者は「短時間労働被保険者」に該当する場合を除いて、適用されません
(短時間労働被保険者とは?)
1週間の所定労働時間数が30時間未満20時間以上である短時間労働者であって、1年以上の雇用に就く者のことをいいます。この場合、雇用保険法は適用されます。