傷害罪(傷害致死、傷害助勢、同時傷害)、暴行罪の条文、時効、構成要件の条文
- 傷害罪(204条)
- 傷害致死罪(205条)
- 傷害助勢罪(206条)
- 同時傷害罪(207条)
- 暴行罪(208条)
- 危険運転致死傷罪(208条の2)
- 凶器準備集合罪・結集罪(208条の3)
- 傷害の罪で告訴するときの注意点
傷害の罪(刑法204条~208条の3)の保護法益は、「 人の生命、身体の安全性 」です。これらの罪は、すべて非親告罪になります。
民事では、不法行為に基づく慰謝料請求や、休業補償など損害賠償請求も可能になります。
傷害罪(204条)
刑法204条 条文
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
傷害罪の構成要件と時効
傷害罪とは、暴行その他の手段で他人に身体的傷害を負わせたときに成立する罪です。傷害(ケガ)をしなかった場合は、暴行罪になります
- 「暴行」とは、物理的な力の行使をいい、
- 「その他の」手段とは・梅毒・HIVなど感染者が性交をして相手にも性病を感染させる・毒薬・劇薬を服用させることを含みます。
傷害罪の公訴時効は、10年です。
傷害致死罪(刑法205条)
刑法205条 条文
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
傷害致死罪の構成要件と時効
傷害致死罪とは、暴行その他の手段で他人に身体的傷害を負わせ、その結果人を死亡させたときに成立する罪です。 暴行を加えた時点で死亡しなくても、暴行が原因となって死亡した場合にもあてはまります。 最低でも、3年以上の有期懲役がこの罪の罰です。
傷害致死罪の公訴時効は、20年です。
傷害助勢罪(刑法206条)
刑法206条 条文
前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
傷害助勢罪の構成要件と時効
前二条とは傷害罪(204条)と傷害致死罪(205条)のことをさします。
傷害害助勢罪とは、傷害罪(204条)や傷害致死罪(205条)の暴行等行為中にヤジ馬的に加害者を煽動・支援した場合に成立する罪です。自分自身が人を傷害しなかったとしても、罪になります。ただし煽動・支援したとしても、被害者が傷害・死亡しなかった場合は罪になりません。
傷害助勢罪の公訴時効は3年です。
同時傷害罪(刑法207条)
刑法207条 条文
二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。
同時傷害罪について
複数人で同時にひとりに対してそれぞれ独自に暴行を加えて傷害を負わせた場合に
- ひとつの傷害を誰が負わせたか特定できない
- 2個以上の傷害が誰の暴行で生じたか特定できない
これらのときに、複数人の者たちは、傷害罪の共同正犯の責任を負います。この場合に成立する犯罪が同時傷害罪です。
誰が何をしたか、あやふやなまま起訴することはあまり良くないとされていることから、実際に、この罪を適用されることは少ないようですが、告訴する時には、利用できます。
暴行罪(刑法208条)
刑法208条 条文
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪の構成要件と時効
人に対し暴行を加えた場合で、相手が傷害を負わなかったときに成立する罪です。 暴行罪の特別罪として、以下のものがあります。
- 集団的暴行罪
- 共同暴行罪
- 常習的暴行罪
暴行罪の公訴時効は3年です。
危険運転致死傷罪(208条の2)
刑法208条の2 条文
アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。
赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。
危険運転致死傷罪についての構成要件
危険運転致死傷罪とは、以下のような場合に他人に負傷させたり、他人を死亡させたりした場合に成立する罪です。人に負傷させた場合は、15年以下の懲役刑、人を死亡させた場合は、1年以上の有期懲役になります。
- アルコール又は薬物を服用したために、まともな運転ができないにもかかわらず、自動車を運転した場合
- 車の運転制御ができないほどの高速度、又は運転技術がないにも関わらず自動車を運転した場合
- 他の人や車の通行を妨害する目的で、割込み運転や接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度を出して自動車を運転した場合
- 赤色信号や、警察官などの手旗信号など交通規制を無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度を出して自動車を運転した場合
公訴時効
危険運転致傷罪の公訴時効は、10年です。
危険運転致死罪の公訴時効は、20年です。
凶器準備集合罪・凶器準備結集罪(刑法208条の3)の条文、時効、構成要件
刑法208条の3 条文
2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、3年以下の懲役に処する。
凶器準備集合罪・凶器準備結集罪について
凶器準備集合罪とは、複数人(2人以上)が他人の生命・身体・財産に対して共同して害を加える目的で、自分で凶器を準備するか、仲間が凶器を準備しているのを知って集合すると成立する罪のことです。
また、 凶器準備結集罪とは、複数人(2人以上)が他人の生命・身体・財産に対して共同して害を加える目的で、自分で凶器を準備するか、仲間が凶器を準備しているのを知って、人を集合させると成立する罪です。集合罪より刑が重いです。
公訴時効
凶器準備集合罪・凶器準備結集罪の公訴時効は、ともに3年です。
傷害・暴行の罪で告訴するときの注意点
犯行日時・場所・犯行の動機、実際にあった暴力(方法、部位、回数)などを詳しく記載します。傷害の内容は医師の診断書を添付し、加療・入院加療・全治期間・傷害箇所を実際にあった暴力によるものと合わせて下さい。
関連ページ(広告が含まれています)