告訴後のながれと結果通知
告訴・告発後のながれ
告訴・告発が行われると、あとは警察や検察官が行うので、呼び出しや証人になるよう求められない限りは結果を待つのみになります。以下のように、ことがすすんでいきます。
- 司法警察員は、告訴・告発を受けたら、速やかに関係書類及び証拠物を検察官に送付する義務を負います。 (刑事事件として成立しうるか見極めができる程度に迅速に捜査し、捜査完了前に送付すること)
- 検察官は、送付されてきた証拠や書類を調べ、公訴提起をする(起訴)か、しない(不起訴)か決めます。不起訴とするときは、速やかにその旨を告訴人・告発人に通知すべき義務を負います。また、更に請求があれば、告訴人・告発人に不起訴処分の理由を告げなければなりません(被害者通知制度)
- 起訴されると、刑事裁判が始まります。
証人になったときの注意点
告訴・告発をした場合は、ふつう、事件の重要参考人になります。ですから、犯人が否認している場合には、裁判所から召喚(証人として出頭を命じられること)され、証言を求められることになります。 証人になったときに知っておきたいことです。
- 証人は原則、証言を拒むことはできない
(例外) 証言することによって自分又は一定の近親者が刑事訴追を受けるおそれや、有罪判決を受けるおそれがある事項を除く。 - 証人は、召喚を受けたときに、正当な理由なく出頭しないときは、罰金、拘留を科されたり過料に処せられたり費用の賠償を命ぜられることがある。
- 証人は、自分が記憶している事とは異なる事実を証言すると(その虚偽の陳述が裁判結果に影響するかどうかは関係なく)偽証罪に問われ、自分が起訴されたり、その刑罰は3ヶ月以上10年以下の懲役刑に処される可能性がある。
不起訴処分となるとき
起訴か不起訴かを決める権限は検察官が独占しています。
起訴便宜主義(刑事訴訟法248条)
「犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」 とあり、明らかに犯罪の嫌疑があって訴訟条件がそうなっている場合でも、検察官は起訴しない権限を持っています。
また、告訴内容が真実であったとしても、以下の場合は、不起訴処分として事件を終わらせます。
- 犯罪を構成しないとき
- 犯罪の嫌疑がないことが明白になったとき
- 証拠不十分で、嫌疑が十分でないとき
- 親告罪で告訴が取り消されたとき
- 告発を訴追要件とする事件で告発が取り消されたとき
- 公訴時効が完成しているとき
不起訴に不満な場合
告訴人・告発人は、不起訴処分に不服があれば、検察審査会に対し、その処分の当否の審査を申し立てることができます。
また、告訴人・告発人は、公務員の職権濫用罪などのいわゆる人権じゅうりん事件についてなされた不起訴処分に不服があるときは、不起訴となった事件を付審判請求できます (地方裁判所の審判に付するよう請求できる)
検察審査会へ不起訴処分当否の審査申し立て
検察審査会への申立ては、その事件が、告訴・告発などが訴訟条件(公訴提起要件)となっているかどうかは関係なく認められます
申立てができる人(申立権者)
- 被害者(被害者死亡の場合は、その配偶者、直系親族、兄弟姉妹)
- 告訴人
- 告発人
- 請求を待って受理すべき事件の請求人
申立て先
- 不起訴処分にした検察官所属の検察庁の所在地を受けもつ検察審査会
申立ての方法
- 書面に申立ての理由を明示すること。
検察審査会の制度・しくみ
検察審査会とは
公訴権の実行に関し、民意を反映させてその適正を図るため、検察審査法によって設置された組織のことです。 全国の地方裁判所及びその支部に置かれています。検察審査員は、衆議院議員の選挙権を有する国民の中から、くじによって11人が選定されることになっています。
一事不再理
検察審査会が「起訴相当」「不起訴相当」などの議決をした後は、同一事件について再度審査の申立てをすることはできません。
また、検察審査会へ申立ができない事件として、以下のものがあります
- 内乱に関する罪(刑法77~79条の罪)
- 独占禁止法の罰則違反に関わる事件
検察審査会の議決結果
検察審査会は、非公開で会議を行い、議決の要旨と議決理由を公表します。議決は過半数(6人以上)で決します。
- 「不起訴相当」
検察官が不起訴処分をしたら、手続きは終了します。 - 「不起訴不当」(更に詳しく捜査すべきである)
事件を再起し、改めて捜査・検討しなければなりませんが、公訴提起は義務ではありません。検察官が不起訴処とした場合は再度不服申し立てをすることはできません。 - 「起訴相当」(起訴をすべきである)
起訴相当の議決には3分の2(8人以上)の多数が必要とされています。事件を再起し、改めて捜査しなければなりませんが、公訴提起は義務ではありません。「起訴相当」とされ、検察官が不起訴とし、再度議決したときに、2回目も起訴相当の場合は、強制起訴となります
不起訴相当や起訴相当という議決を受け、その後起訴された事件は、これらの20%程度ありますが、これは、検察審査会へかけられた事件全体の1.3%程度です(水俣病事件,日航ジャンボジェット機墜落事件,薬害エイズ事件,明石花火大会事件など)。
2010年10月4日に小沢一郎衆議院議員が強制的に起訴される議決がなされました。(2回とも起訴相当の議決)検察審査会の決定で現職の国会議員が強制起訴されました。
職権濫用罪は検察審査会と同時に付審判請求をすることもできます (地方裁判所の審判に付するよう請求できる)
付審判請求(準起訴手続き)~職権濫用罪
公務員の職権濫用の罪の不起訴処分に不服があるとき、検察審査会への申し立てと同時に事件を審判に付するよう請求することができます。これを不審判請求(準起訴手続)といいます。
対象となる罪
- 職権濫用罪(刑法第193条~196条)
- 公安調査官の職権濫用罪(破壊活動防止法第45条)
付審判請求権者、請求方式、期間、取り下げ、再請求
- 請求できる人(請求権者)
告訴・告発をした者 - 付審判請求先、請求方式
不起訴処分にした検察官所属の検察庁の所在地を受けもつ地方裁判所に、事件を審判に付するよう請求するものですが、不起訴処分をした検察官に請求書を提出します。 - 付審判請求ができる期間
刑事訴訟法260条の不起訴となった旨の通知を受けた日から7日以内(初日不算入) - 付審判請求の取下げ、再請求
不審判請求のに対する裁判所の決定が通知されるまでは取下げることができます。
取下げた者は、その事件について再度不審判請求をすることは、できません。
公訴提起の義務
不審判請求によって、「起訴相当の理由がある」と認めるときは、検察官は公訴提起(起訴)の義務があります。
被害者通知制度
平成11年4月1日から、検察官による被害者等通知制度が設けられました。告訴・告発の有無を問わず、被害者等が希望・照会した場合は不相当な場合を除いて、検察官は以下の事項を通知することになりました。
- 起訴・不起訴等(移送、中止処分、少年事件を家庭裁判所へ送致など)の事件の処理結果
- 起訴したときは、裁判が行われる裁判所名、裁判日時
- 裁判の結果
また、特に被害者から希望があった場合は以下のことを通知します
- 起訴事実の要旨、不起訴理由の骨子
- 被疑者・被告人の身柄の状況(拘束中か釈放されているか)
- 裁判経過など
犯罪被害者等給付金制度
犯罪被害者等給付金制度は、賠償能力のない犯罪者に対する損害賠償請求の問題点を解決するために制定されました。ただし、すべての犯罪被害者について適用されるものではなく、人の生命や身体を害する犯罪行為により不慮の死をとげたり、または障害が残ってしまったり、一定の重症病を負ってしまった場合に適用されるものです。
昭和49年8月に発生した三菱重工ビル爆破事件等を契機として、公的な犯罪被害者補償制度の確立の必要性が国会やマスコミ等で大きく論議されるようになりました。また、多発する通り魔殺人事件の被害者の遺族や弁護士会等からも被害者救済の制度の確立を求める声が高まりました。
そういった経緯から昭和55年5月1日に「犯罪被害者等給付金支給法」が制定され、昭和56年1月1日から施行されました。平成13年7月1日には、支援対象の拡大や給付基礎額の引上げを中心とした法改正がなされ、 さらに、平成16年12月、犯罪被害者等基本法が成立し、平成17年12月、同法に基づいて犯罪被害者等基本計画が閣議決定され、同基本計画に「犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲等の拡大」が盛り込まれ、重傷病給付金について、支給要件の緩和、支給対象期間の延長等を行う政令改正がなさました。
親族の間で行われた犯罪について支給制限の緩和を行う規則改正がされ、いずれも平成18年4月1日から施行されることになったのです。
対象となる犯罪被害
本制度による支給の対象となる犯罪被害は、
- 日本国内又は日本国外にある日本船舶若しくは日本航空機内において行われた
- 人の生命または身体を害する罪に当たる犯罪行為(過失を除く)による死亡、重傷病または障害
- また、緊急避難による行為、心身喪失者または刑事未成年者の行為であるために刑法上加害者が罰せられない場合も対象に含まれます。
遺族給付金
遺族給付金は死亡した被害者の遺族に対して支給され、その額は、被害者の年齢や勤労による収入額等に基づいて算定されます。犯罪行為により生じた負傷、または、疾病について被害者が死亡前に療養を受けた場合には、その負傷、または、疾病から1年間における保険診療による医療費の自己負担分と休業損害を考慮した額の合算額が加算されて支給されます。
この場合、加療及び入院要件は必要とされません。
給付額:320万円~2,964.5万円
受給者: 亡くなられた被害者の第一順位の遺族
1.配偶者
2.被害者の収入によって生計を維持していた被害者の子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
3.上の2に該当しない子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
重傷病給付金
重傷病給付金は、犯罪行為により重大な負傷、または疾病を受けた方に対して支給されます。
給付金は、加療期間1ヶ月以上、かつ、入院期間3日以上(犯罪被害に起因するPTSD等の精神疾患については、その症状の程度が3日以上労務に服することができない程度の場合は、入院期間がなくても対象)の被害者の方に、1年を限度として保険診療による医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額の合算額が支給されます。
給付額:負傷・疾病から1年間の保険診療による医療費の自己負担部分と休業損害を考慮した額を合算した額(上限額120万円)
受給者:犯罪行為によって重傷病、加療一か月以上かつ入院3日以上を要する負傷または疾病を負った被害者本人(精神疾患については3日以上労務に服することができない程度の疾病)
障害給付金
障害給付金は、身体に障害が残った方に対して支給されます。その額は、被害者の年齢や勤労による収入額等に基づいて算定されます。
給付額:18万円~3,974.4万円 法令に定める障害等級(14級~1級)による
受給者:障害が残った被害者本人
証人・参考人等給付金制度
刑事事件で、裁判所から証人として呼ばれたり、捜査機関から参考人として呼ばれた人が、危害を加えられた場合の制度があります。
「証人等の被害についての給付に関する法律」
証人・参考人又はそれらの近親者(配偶者、直系血族、同居の親族)又は国選弁護人やその近親者が、他人から身体、生命に危害を加えられた場合に、国が被害者や遺族に対し、療養費用の給付、介護給付、遺族給付などを行います。
関連ページ(広告が含まれています)